2012年4月9日月曜日

最近読んだ本と、富士通のはなし

Fujitsu Grid Girls
author:scenicaviator

ぼくは富士通のインサイダーではないので、公開情報しか知らないんだけど。

結構前にプロジェクトXでもやっていたので、割と有名かもしれませんが、富士通のコンピュータ事業ってのは、池田敏雄さんというキーマンがいました。

詳細は適当にぐぐって貰えばよいですが、書籍だと



に、弟子の山本卓眞さんのインタビューが載っていて、いわゆる池田敏雄伝説みたいなのがでてきます。この「計算機や〜」も残念ながら品切れなんですが、サマリ版の新書が今はでてるっぽいです。



さて、池田さんは働きすぎて壮絶な「戦死」をとげられるわけですが、その後富士通のコンピュータビジネスは大きな問題に直面します。IBM互換の問題です。

これもぐぐってもらえばいくらでも情報がでてきますが、かいつまむと、池田さんの時代にIBM互換でないコンピュータを作ったら、ユーザがそれまでIBMのコンピュータ向けに作ったプログラムが(当然)動かず、富士通のコンピュータがあまり売れませんでした。

すでにIBMのコンピュータは世界で売れていたので、世界で富士通のコンピュータを売るためには、IBMのコンピュータと互換性のある(IBM向けにつくったプログラムの動く)コンピュータをつくって売ろうと考えたのです。それがいわゆる互換機路線。

で、こっからが本題なんですが、当然IBMが起こって、富士通側にクレームを入れてくるわけです。その交渉の内容を当事者が小説仕立てにしたのが、この2冊の本です。





著者はすでにいろんな人がネタバレしていますが、鳴戸道郎さん。2009年に亡くなっています。(富士通元副会長の鳴戸道郎氏が逝去 )

病床で書かれたと言われているのが、この2冊の小説です。
最初の「雲を掴め」のほうは、IBMと富士通の直接交渉を小説風に再現したものです。後者の「雲の果てに」は第三者機関での仲裁の舞台裏となっています。

小説としてはちょっと微妙なんですが、ルイスガースナーの「巨像は踊る」風にリアルなドキュメンタリーとして見ると、とても面白いです。アメリカ人相手の交渉や、弁護士とのやりとりは、「あーこういうの日本人苦手なんだろうなー」と思いながらも、いわゆる根性で乗り切る鳴門さんに、悲しい日本人の性を感じます。。。

ただ、この事件は、コンニチ的な意義を見出すのが難しく、「雲の果てに」の後半でも出てきますが、業界としてはメインフレームからダウンサイジングの時代となり、和解締結のあたりになると、完全にPC主導のマーケットになっているんですよね。

両者の法務部門ががんばっている間に時代が変わってしまった、というのが数少ない教訓かもしれません。